ここでは、リネンやコットンなどを使って、
洋服や雑貨を手作りするときに知っておいて欲しい基本や、
ソーイングの基礎的なことを解説していきたいと思っています。
ハンドメイドを始めてみたい方にはぜひ目を通して欲しいです。
地直し
リネンやコットンなどの生地の地直しについてお話したいと思います。
購入したばかり生地は写真のように端の地の目が湾曲しているのが普通です。
これは、生地を芯に巻くときに、端を固定しているので、
固定されていない部分との差がおきやすいことによります。
なので、通常は両端が同じ方向(中心から対象)に曲がっています。
この生地の場合は大体きれいに地の目がとおっていて、端から5cmくらいがゆがんでいます。
モノによっては、それに加えてさらに斜めにゆがんでいたりもします。
「地直し」とはこれを縦横まっすぐにする作業です。
縮む生地は「水通し」という作業が必要になりますが、すでに「水通し」済みのものも販売されています。
写真の生地には
「最初の水通しの段階で10%程度の縮みがあります。特によこよりもたての方が大きく縮みます。」
と注意書きがありました。「水通し」が必要な生地です。
注意書きがない場合、生地に10cm四方のしるしをつけて蒸気アイロンをかけて縮み方を確認して下さい。
アパレルの場合は、縮み率が3%くらいまでは許容範囲としている場合が多いです。
「水通し」の方法
1 水の中に一時間くらいつけて十分に水を含ませます。※事前に色落ちがないか確認しておいてください。
2 しわにならないように軽く水を切ります。※洗濯機の脱水機能は使わないで下さい。
3 中表に広げて陰干します。
4 生乾きになったら地の目の縦と横を整えるようにアイロンをかけます。
※乾いてしまってからではいけません。
必ず生乾きの状態でかけましょう。
もし、乾いてしまったら生乾きくらいまで霧を吹きましょう。
「水通し」なしの場合
全体に霧を吹くか蒸気アイロンで、地の目を整えるようにアイロンをかけてください。
何にでもいえることですが、下準備からきっちりと作業を積み上げていくと、 仕上がりが違ってきます。「地直し」はいちばん最初のそんな作業です。
生地を裁断するとき1・・・型紙を並べる
通常、型紙の上の地の目は「たて地」のことです。 「たて地」とは巻いてある反物の長いほうの方向です。
生地を二つ折りにして裁断するときは、下側にゆがみやたるみがないことを確かめ、
端どうしを合わせて、横地の目が通っているかも確認してください。
「Nara-Kara.」の型紙は縫い代つきですので、
型紙は縫い代端きっちりにカットしておきます。
型紙の地の目( 矢印の線 )を耳から平行に合わせて配置します。
ここで必ず全てのパーツが配置できるか確認してください。
理想の並べ方は
縦方向に、全て上を向いて型紙が並んでいる
「一方方向」といいます。柄の方向や毛並みがある場合は必ず一方方向です。
これに対し、上下になっているパーツを並べることを「差込み」といいます。
生地の上下がわからないものは「差込み」でよいです。
縫い合わせるもの同士を並べる
生地の位置による色のムラなどが出にくいようにです。
中心が「耳」に来ないように
ゆがみの出やすい場所なので、正面や背面の人目につきやすいところは避ける
ほうがよいでしょう。
芯を貼るパーツは周囲にゆとりをみてカットします。
芯を貼ることで生地が縮むことはよくあります。
芯を貼ったあとで型紙をのせて、余分はカットします。
写真のように点線で生地を一旦切っておくと狭い室内でも扱いやすくなります。
さて、以上は本当に基本の理想の並べ方です。
前述の「差込み」で並べると、生地が少なくすむことが多いですし、
前端や後端が「みみ」のところに来たとしても間違いではありません。
「なるべくそうしたほうがいいですよ。」というアドバイスだと思ってください。
生地を裁断するとき基本2・・・裁断する
ここからは実際にはさみで裁断するところです。
ずれないように裁断することが大事です。
そこで便利なのが「おもり(文鎮)」です。
写真は小さなパーツですが、もっと大きいパーツになると
「かなざし」をおいてそれに「おもり」を乗せています。
そして、合印(ノッチ)のところだけマチ針を打ちます。
マチ針を打つと生地が少しずれるので最小限にしています。
そして裁断ですが、
はさみの内側(自分の身体側)がパーツの外側に来るようにすると、
(右利きの人の場合写真の矢印の方向に切り進む)
生地が浮きづらくずれにくいような気がします。
芯を貼るパーツは大きめに裁断します。
パーツを裁断したあとで、合印(ノッチ)に切り込みを入れます。
合印とは、言葉通り、「こことここを合わせて縫うしるし」です。
縫い合わせるパーツの形がすごく異なっているときは細かめに、
まっすぐ同士でゆるやかなカーブのものは粗めになっているのが普通です。
ノッチ以外にしるしのいるところは「チャコ」や「切りじつけ」などでしるしをつけます。
わたしは「目打ち」+「消えるチャコペン」を愛用しています。
たとえばパッチポケット位置だったら「目打ち」で要所に軽くしるしをつけたあと
「チャコペン」でマークしておくという風に使っています。
あと、「チャコライナー(パウダーチョーク)」も便利です。
これは、粉をライン上にひくもので、払うと簡単に取れます。
ノッチ(合印)の入れ方
ノッチ(合印)とは接ぎ合わせるときに距離を合わせる印です。(接ぐ=パーツ同士を縫い合わせること)
ギャザーの始まりと終わりには必ず入れます。袖山や、長い脇縫いなども印を入れます。
縫い代のノッチ
縫い代付きのノッチ(合印)は、型紙どおりに生地を裁断したあと
縫い代巾の1/3くらい型紙も一緒に切り込みます。
中心のノッチ
「わ」に裁断したところは型紙上にノッチはありませんが縫い合わせるときに重要です。
印がないとヨーク切替などの中心がずれてしまいますので中心も忘れず、縫い代巾の1/3くらい切り込みを入れてください。
(裾など縫い合わせるところがない場合は入れなくても良いです。)
柄合わせ
上下のある生地のとき
上下のある生地の場合の柄合わせの方法です。
上下を決める
写真の生地は上下でモチーフが完全に逆向きになっています。
このような場合はまず、図柄として上下がない場合、自分の好きな方向を上下に決めます。
今回私は生地を遠くから眺めて「スペード」みたいに見える方向に
決めました。
中心を決める
中心は基本的には左右対称に見えるような位置に決めましょう。
横段を決める
今度は横段の出方を決めます。
この型紙は裾下がりがないので前後の裾線で柄を決めることにします。
柄は途切れたときにあまり違和感のない位置にします。
(失敗例:以前何も考えず動物の首を切ってしまったことがあります。・・・)
裾線を決めたら基準になる柄を前の型紙に書き写します。
今度は前に合わせて後の柄を型紙に書き写します。
柄が決まったらあとは型紙を柄の位置に合わせて乗せて裁断します。
※注意:素材によっては柄の縦横と地の目の縦横がずれている場合があります。
基本は「地の目優先」で裁断しますが、
ゆがみがわずかだとか、どうしても「柄をあわせたい」という場合は
「柄」を優先しても仕方ないかと思います。
接着芯を貼る
芯をはる目的として主なものには以下の三つがあります。
1、シルエットづくり
2、補強
3、生地を扱いやすくする
- ~接着芯の種類~
芯の種類は、主に「織物芯」「不織布芯」があります。
手作り用の芯は「不織布」で、ほんの数種類しか扱っていないところがほとんどですが、
アパレル用の芯は本当にたくさんの種類があり、
わたしの経験上は「織物芯」を使われることが多かったです。
「不織布芯」しか手に入らない場合は生地の厚みに合わせて選ぶといいでしょう。
リネンやコットンですと、普通地用になると思います。
- ~芯を貼る~
芯を貼るときに大事なことは
1.熱
2.蒸気
3.圧力
といわれています。
熱と蒸気で樹脂をとかして
圧力で布地の繊維にしっかりくっつけるのです。
それがうまくいかないとはがれてしまいます。
本来、接着芯は接着機械で接着します。
大きな接着面を持ったアイロンといえるでしょうか?
ただ、家庭では無理なので、
代わりに家庭用アイロンを使用する。のだと思ってください。
ですから、芯貼りは時間のかかる作業です。
家庭用アイロンは蒸気アイロンであることが多いと思います。
140度くらいにして、蒸気をオンにします。
芯によっては「蒸気」をあててはいけないと指示のあるものもあります。その場合は指示通りにしてください。
表裏に注意して生地に芯地を重ねあて布をします。
(あて布はアイロンに芯の樹脂がくっつかないようにするためです。)
アイロンはすべらさず、
端から少しずつ押さえながら、
体重をかけて、一ヵ所10秒以上かけます。
蒸気の出る穴は圧力がかかっていませんから、
その部分にも同じように再度かけてください。
全体に接着できたら、熱と蒸気が抜けるまで平らに保ち次の作業に移らないで下さい。
これは樹脂がしっかり布地の繊維にしっかりくっついた状態で安定させるためです。
芯を貼ったパーツは型紙に合わせてみて必要なら周囲をカットします。
伸び止めテープについて
~伸び止めテープを貼る目的~
伸び止めテープをはる目的として主なものには以下の三つがあります。
1、伸びを止めて縫いやすくする (ラグラン線、袖ぐりなど)
2、伸びを止めて形を保つ (肩線、袖ぐりなど)
3、弱りやすいところを補強する (ファスナー付け位置など)
伸び止めテープ
~伸び止めテープの基本の貼り方~
縫い目にかかるように、
出来上がった時に縫い代の中に隠れるところに貼るのが基本です
~伸び止めテープの巾~
「縫い目にかかる」ようにするには縫い代の巾+2mmが基本になります
10mm巾の縫い代の場合は12mm
12mm巾の縫い代の場合は14mm
市販の伸び止めテープは10.12.15mm巾など巾が限られますので14mmのときは15mm巾を使用するとよいと思います
市販の伸び止めテープは10.12.15mm巾など巾が限られますので14mmのときは15mm巾を使用するとよいと思います
~ハンドメイドの洋裁に伸び止めテープを使う場合~
でも、家庭用の洋裁に使うときはたくさんの巾を揃えるのもムダが多いと思います。
縫い目にかかればよいので10mm巾の縫い代に10mm巾のテープを使い、端から2mm離して貼ってもよいです。
~代表的な伸び止めの貼り方例~
★ファスナー付け位置
個人的には少し伸縮して生地になじむ素材のもので10mm巾か12mm巾の伸び止めテープを使用しています。平織の硬いものより扱いやすいのでお勧めです。
このようなテープです
それ以外の巾を使いたいときは接着芯をカットして使っています
~伸び止めテープあれこれ~
一口で伸び止めテープと言っても巾以外にも素材や特性もさまざまなものがあります。
素材は私が使用しているような少し伸縮するものから、平織りのしっかりしたものまで様々です。
また、縦地の目のテープや少しバイヤスのもの、半分バイヤスのもの。2種類の巾の違うテープを重ね縫い合わせてあるものなどあり、
袖ぐり用、前端用、滑脱(生地の縫い目が割れてしまうこと)防止用などの用途によって
副資材メーカーさんはたくさんの種類を作られています。
なぜたくさんの種類があるかというと、いろいろなアパレル会社の要望に答えるため、
というか答えてきたから増えた。と言えるでしょう。
アパレルのものづくりはいかに「手間なくきれいにたくさんの同じ商品を作る」かということに尽きると思います。それに合わせて縫製を簡単にするためにテープや接着芯が開発されます。
私は、家庭でのハンドメイドはアパレルのそれとは別だと考えています。
ていねいにしつけしたり、ゆっくりと針を進めたり、部分的には手縫いしたりと応用が出来ます。
「縫いにくそうだな」と感じたら伸び止めを使ったり、しつけをしたりと方法もさまざま選べるもので、「こうでなくてはいけない」と決め付けず、素材やデザイン、お好みにより芯や伸び止めの使い方を柔軟に考えたらよいと思います。
縫い代始末
縫い代1
縫い割り
もっともポピュラーな縫い代始末です。
中表に合わせて縫い合わせて縫い代を割ります。
裏地がない場合は両側の縫い代端にロックをかけます。
片倒し
縫い割りと共によく使われます。
中表に合わせて縫い合わせ、縫い代をそのまま片側に倒します。
裏地がない場合はロック始末します。
倒したほうを「高」と表現します。
(※後ろ側に縫い代を倒した場合「後高(うしろだか)」)
この「高」という表現はダーツにも使われます。
縫い代がたくさん重なっていて高さが出るほうが「高」です。
折り伏せ縫い(折り伏せ)
縫い代をくるみこんで縫い代端を内側に巻き込む始末の仕方で、丈夫に仕上がります。
表にステッチが出るので、カジュアルな商品などに使われることが多いです。
図を見てもらうとわかるように縫い代巾が左右違います。
最初から巾を変えて裁断しても間違いではありませんが、
やりやすい「折り伏せ縫いの作り方」は、
-両側の縫い代を広い巾でとり、中表に縫い合わせたあと
-倒す側の縫い代を半分くらいの巾にカットします。
-広いほうで細いほうをくるむように折り込んでステッチで押さえます。
「0.8cmステッチ 後高 折り伏せ」という表現は
「後に0.8cmのステッチが入るように折り伏せ縫いをする」ということです。
袋縫い
「折り伏せ」は表にステッチが出ますが、「袋縫い」は表にステッチが出ません。
ジーンズのポケットの袋布によく使われています。
縫い代端が表に出ず、丈夫に仕上がりますが、何重にもなるので分厚い生地には不向きです。
作り方は
外表に合わせて縫い代巾の1/3くらいのところを縫い
裏に返して仕上がり線を縫う(図:左)
表に返す (図:右)
たとえば縫い代が1cm巾だったら、表から4mmくらいのところを縫い、
裏に返して6mmのところを縫うと、仕上がり線どおりに仕上がりますね。
表に返した場合に最初の縫い代の端が出ないように注意してください。
ジーンズのポケットの袋布の場合は、表に返さず、2度目のステッチの状態で仕上がっています。
この場合も「袋縫い」といいます。
縫い代2
裏バイヤス始末と、パイピング始末についてです。
裏バイヤス始末
縫い代端をバイヤステープで始末する方法です。見返しよりカジュアルに、軽く仕上がります。
中表に本体とバイヤス布を接いで、バイヤス布を裏側に返し
バイヤス布の縫い代端を折り込んでステッチで押さえます。
縫い代巾はバイヤステープ巾の半分くらいにすると厚みが出ませんが、
やりづらい場合は1cmくらいで縫ってから縫い代を細い巾に切り落とすとよいでしょう。
パイピング始末
パイピングは本体の縫い代をなしにして(仕上がり線に裁ち切り)、共布や別布でくるむ方法です
パイピング始末1
本体とパイピング布を中表に縫ってパイピング布を折り返して裏側に回します。
パイピングの裏の端を折り込んで
図のように、表からパイピング布にかかるようにステッチをかけるか、
パイピングと本体の接ぎ目に落としミシンをかけるか、
もしくは、裏を手まつりして仕上げます。
表にステッチを見せたくない場合はこの方法でしてください。
パイピング始末2
この方法はまず、パイピングを両折れに作っておいて挟み込んでステッチでおさえる方法です。
市販の両折れのパイピングテープなどを使う場合はこの方法ですが、
縫い目を落としやすいのでしつけをしてから縫うほうが確実です。
パイピング始末3
この方法はパイピング始末1とほぼ同じですが、裏側を折りこまずに仕立てる方法です。
あまり使う機会はないかもしれませんが素材が分厚い場合などにボリュームを減らすために使います。
バイヤス布の端はほつれにくいので裁ち切りのままですが、
それでもほつれる生地の場合はロック始末したり、見返し始末に変更するなどしてください。
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